『怪物つれづれ雑談』序
中国古代・夏王朝の禹王(うおう)は、水中陸上の妖怪を退治し、その姿を九鼎(きゅうてい)に鋳造・彫刻して、国の民に見せさせなさったため、化物たちは先に自分たちの姿形を国の人々に知られてしまい、人々に害を為すことができなくなったという。
今、鳥文斎の主(あるじ)が、不思議な物語を絵図に描き写して、物怖じする子供たちにこれを授け、子供たちの助けとなって欲しいと願った。私もさらにその意図を述べようと、鳥の囀りのような言葉を話す中国人が鬼と光を争うことを恥ずかしく思うと言った、その灯火の光の下で、妖怪の手のひらに文字を書いた、その筆を取るのはそういう次第である。
睦月 白蓮庵 黄亀(びゃくれんあん おうき)述
『怪物つれづれ雑談』序は、こんな書き出しで始まっている。江戸時代後期に書かれた黄表紙のひとつで、ばけものの物語だが、なかなか趣がある。


